女子バスケットボール Wリーグ所属 山梨クィーンビーズ 一人に頼らず全員でゲームを作れるチームを目指す

経験豊富なヘッドコーチが目指すもの

「大学で指導していたときの教え子もいて、気が楽な部分はありましたが、正直チームに受け入れられるか、心配はありました」
Wリーグ2018-19シーズン途中から、チームの指揮を託された伊與田好彦ヘッドコーチは、就任当時の心境を振り返った。高校の教師として女子バスケットボールの指導をスタートさせ、大学女子バスケットの強豪・愛知学泉大学でも指揮を取った経験もある伊與田ヘッドコーチ。30年以上の指導キャリアを持ってしても最初は、不安の立ち上がりだったという。しかし「キャプテンの岡を始め、クレバーな選手が本当に多い。私の指示を理解してプレーをしてくれたので、本当に助かりました」と、自身の不安は解消された。それでも、シーズン途中の就任でチームに自身の考えをすぐに浸透させることは難しく、深掘りした指導ができないまま戦いを終えた。
昨シーズンは手探り状態となったが、今シーズンは、“一人に頼るのではなく、チーム全体でゲームを作る”を基盤としてチームづくりに励んでいる。「エースに頼るチーム作りをすると、ケガなどのアクシデントはもちろんですが、ファウルトラブルでプレーできない状況になると、チーム力が落ちてしまう。だから、誰がどんなタイミングでコートに立ってもチーム力が落ちないようにしなければいけないんです」

競技力アップにはハードワークに耐えられるメンタルと人間力の向上が必要と言う伊與田ヘッドコーチ

チームのレベルアップを選手が実感

昨シーズン後に4人が退団したが、4人が新加入。そのうち2人が身長180cmと、チームの課題である“高さ”を補強する存在となっている。それでも「Wリーグで180cmは大きいとはいえないんです。185cm以上ないと大型選手とはいえない。それでも、うちのチームでは一番の長身になりますから、金子(仁美)と豊田(有紗)にはWリーグの当たりに負けないフィジカル強化をしてもらい、チームが目指すバスケをしっかりと理解してもらわないと困るんです」(伊與田)。
チームがもう一段階レベルアップするには、オフェンス、ディフェンス問わずリバウンドを制することができるかが大きなポイントになる。

伊與田ヘッドコーチの目指すバスケがチームに根付いているのは、選手の話を聞いてもわかる。昨シーズンからキャプテンを任された岡萌乃は「チームがよくなっていると実感できる瞬間が多くあるんです。選手同士のコミュニケーションも増えていて、雰囲気もよくなっています」と笑顔をみせた。もともと話すことが大好きだったという岡は、キャプテン就任と同時に積極的に選手に話しかけ、チームの雰囲気改善に尽力。「チームに入ってコミュニケーション力が伸びたことが一番の成長」と胸を張る。そんな岡を支える副キャプテンの水野菜穂は、チームの変化を次のように振り返った。「ヘッドコーチが変わったばかりの昨シーズンは、表面上だけでプレーしていた感じがあった。でも、今シーズンは、細かいプレーまで理解しながら練習ができているので、レベルアップできていると思います」。練習を見ていても、選手同士が話し合う場面が多く、一体感がこちらにも伝わってきた。

「ディフェンス強化がチームの課題」とキャプテンの岡(左)と副キャプテンの水野(右)は声を揃える

プレーオフ進出の目標を実現させるシーズンに!

変化が目に見える形となり、シーズン開幕へ向けて順調な調整を続けるクィーンビーズ。今シーズンは「実現」をスローガンにプレーオフ進出を目指すという。伊與田ヘッドコーチは、「まずは、今練習していることを7月のサマーリーグでどれだけ発揮できるか。僕自身は今いる選手の能力をいかに開花させてあげられるかに集中します」と話す。一方、副キャプテンの水野は「Wリーグで戦っている以上は結果を出さなければいけないと思う。今、たくさんの人が応援してくれますが、低迷が続けば離れていってしまうので、そうさせないためにも結果を残したい」と力強いコメントを残した。
Wリーグでの最高成績は11位。上位進出を果たせない状況は続いているが、プレーオフ進出となる8位以内に入る目標を叶えるため、チーム一丸となった猛練習はこれからも続く。

日々の仕事をこなしたあとに、ハードな練習を行っている山梨クィーンビーズの選手たち


撮影・文◎松野友克

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