県立日川高校 男子バスケットボール部 インターハイ予選で敗れた悔しさをバネに、23年ぶりの大舞台に挑む

“このままでは終われない” 5人の3年生が抱いた思い

「インターハイ予選で負けた悔しさから、(ウインターカップは)絶対に出場権を獲りにいくという気持ちは強かった」

 こう話すのは、県立日川高校男子バスケットボール部を指揮する古田厚司顧問だ。日川高は、5月の県総体で10年ぶり18度目の優勝を成し遂げたこともあり、2010年以来のインターハイ出場の可能性も十分に考えられた。しかし、予選の決勝で東海大付甲府高校に63対72で敗れ、通算17度目のインターハイ出場を逃してしまった。

「例年、多くの3年生はインターハイ予選を区切りにするため、ウインターカップ予選に挑む選手はわずかでした。でも今年は、9人中5人が残ってくれた。進路も含めて迷った選手も多いと思いますが、インターハイ予選の悔しさで続けるという決意をしてくれた選手もいました」と古田顧問は教えてくれた。

 センターの髙橋佑磨(3年)もインターハイ予選を高校最後の大会と決めていた一人だった。しかし「インターハイ予選の結果が悔しくて、僕以外のスタメン4人も最後まで残るということも聞いていたので、自分も最後まで頑張ろうと思いました」と決意した。

 チームの軸となる5人の3年生が残り、ウインターカップ予選でリベンジを誓った日川高男子バスケ部。しかし、コロナ禍の影響で、活動休止や分散登校、対外試合の禁止などの影響で、本格的なチーム練習がほとんどできない状況が続いた。「大会2週間前には、県内限定で対外試合は許可されましたが、実戦がほとんど経験できないなかでの予選になりました。状況は他の高校も同じだと思いましたので、勝ち負けというより、自分たちのバスケを40分やり抜こうという意識を持って大会に挑みました」(古田顧問)

 迎えたウインターカップ山梨県予選。決勝までコマを進めた日川高は、インターハイ予選決勝で敗れた東海大付甲府高と激突する。試合は “ディフェンスからのブレイク”という磨き上げた自分たちスタイルを発揮した日川高が、86対70で勝利し、23年ぶり7回目の出場を決めた。チームの得点源として活躍した藤崎郁海(3年)は、「自分たちのスタイルを数多くだせたのが勝てた要因」と笑顔を見せた。

「自分たちが主体となることで、楽しい雰囲気でバスケができている」と話す髙橋

藤崎は、「先生のアドバイスで落ち着いたプレーができるようになった」と感謝の言葉を話す

見ている人に“楽しんでいる”と思ってもらえるプレーを

 20年以上同部を率いてきた古田顧問は、関東エリアの強化委員長やU-18日本代表のスタッフなども歴任した実績の持ち主でもある。そんな古田顧問には大切にしている言葉があるという。それは、その裏には、チームの応援旗にも記されている「夢現」という2文字だ。

「15年以上前に、NBAの選手を招待して、子どもたちを指導してもらうイベントを実施したんです。そのとき来日した選手が話していた言葉が『夢現』だったんです。自分の夢や目標を実現するために毎日努力することが大切なんだと教えてくれました。その意味も大切にしながら、子どもたちが秘める無限の可能性にも挑戦してほしいという僕の気持ちを込めて、『夢現』という造語の意味を選手たちには伝えています」

 古田顧問は、選手たちにスポーツの楽しさも味わってほしいとも語ってくれた。「一生懸命やるのはもちろんですが、スポーツの楽しさも忘れないでほしい。真剣さの中にもバスケットボールを楽しむ姿勢を持ち続けることで、どんな状況でも最後まで必死にプレーできるのではないかと思う。あと、見ている人にも楽しんでプレーしていることを感じてもらうのも大切。そのためも、コートの中では、必要なときに必要な言葉を発することができる選手になってほしいと思います」

「コート内で会話ができるかが、チームの良さにつながる」と古田顧問は語る

全国でも自分たちのバスケを貫き通す

 さまざまな役職を経験していたため、毎年ウインターカップの会場へは足を運んでいたが、自チームを率いては今回が初となるため、「うれしい気持ちは大きい」とも話す古田顧問。初戦は12月24日(金)で、愛媛代表の松山学院高校が相手となる。本番を前に、山梨学院大学との練習試合を行うなど、入念な準備をしてきた。「県代表として自分たちのバスケが全国でどれだけ通用するか。23年ぶりではありますが初出場と変わらない感覚もありますが、浮足立って何もできなくて終わる記念試合には絶対にしたくない。そのための準備はしてきましたから」と前を向く。

 主将の竹島大地(3年)は「目標はメインコートに立つこと。1回戦から集中して、勝てるように頑張っていきたい」と意気込みを語った。また、古田顧問の息子でポイントガードの古田大也(3年)は「泣いても笑っても高校生活最後のバスケ。3年間頑張って取り組んできたものをコートの中で表現して笑って終われるようにしたい」と話す。そして、競技としてバスケットボールをプレーするのは高校までと決めている關根和泉(3年)は「最後なので、バスケットボールを心から楽しみたい」と、古田顧問のモットーを胸にコーチに立つことを誓ってくれた。

 悔いを残さないために、最後まで全力で自分たちのバスケをすることを誓った3年生5人を中心に挑む今回のウインターカップ。どんな結果が出たとしても、チームには大きな財産として、今後もチームに受け継がれることは間違いない。

「自分の壁は自分で越えなきゃいけない」という古田顧問からの言葉を胸に練習に励む竹島

古田大也は、父のもとで優勝したいという気持ちで高校3年間努力を続けたという

「この3年間でさまざまな判断力が身につけられた」と振り返る關根

取材・文/松野友克

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