山梨学院高校男子サッカー部 強豪校と認められるための戦いはここからはじまる

真の強豪チームと呼ばれるために

 2020年12月31日から2021年1月11日まで開催された第99回全国高校サッカー選手権大会。山梨県代表の山梨学院高校は、1回戦から決勝までPK戦が3度と、つねに接戦のゲームを勝ち上がり11年ぶり2回目の選手権制覇を成し遂げた。
 それから約1ヵ月後、新チーム発足後最初の公式戦となった山梨県高校新人大会でも3年ぶりに優勝。日本一に輝いた先輩たちの姿を見てきた後輩たちが、自分たちの代でも頂に立つために、順調なスタートを切った。しかし、チームを率いる長谷川大監督は、連覇を目指すという感覚は全くないと口にする。

 「過去20年を振り返っても、全国大会で連続優勝しているのは国見(長崎県)しかない。過去10年で見ても、2度優勝しているのは青森山田(青森県)のみ。しかも青森山田は、この5年で4回も決勝に進出しているわけです。その状況をみれば、今年うちが優勝したことを意外と思う人も多いはず。だから、連覇ではなく、まずは青森山田のように常に全国ベスト4入りが果たせる真の強豪と言われるチームを作り上げることが先なんだと考えています。だからこの1、2年が本当の勝負になるんじゃないでしょうか」

 真の強豪へ向けて大切な第一歩となる新チーム。その中心選手の一人で、前チームでもスタメンで出場していたMF・谷口航大は、「もちろん自分たちの代でも日本一を目標にしていますが、前チームと比べまだまだ足りないところは多いので、練習や試合でも意識を高くしてどこにも負けないような強いチームを作っていきたい」と力を込める。

「攻撃面のビルドアップと試合を落ち着かせるという課題をクリアして、さらにチームを引っ張りたい」と語る谷口

日本一にふさわしい組織になる

 秋田出身の長谷川監督は、自身も高校時代には全国を経験し、指導者になってからも母校である秋田商を全国出場に導いている。一時、高校サッカーを離れて大学サッカーで指導したが、2019年に再び高校サッカーの舞台に戻ってきた。そんな長谷川監督の指導者としてのモットーは、「サッカーを語る前に、サッカーを語れる人材を育成すること」だ。

 「日本一になったからそれでいいということは絶対にない。その称号を得たなら、もしくは得たいのなら、それにふさわしい組織や選手でいなければいけない。だから、サッカーだけでなく私生活の過ごし方が本当に大事。日頃からの態度や姿勢の良し悪しは、試合で苦しくなったときにはっきりと表れますから。もちろん、僕ら指導者も同じ。サッカーが自由なスポーツだから、選手をしばるとプレーに影響し、創造性がなくなると思うこともある。だからといって、言いたいことも言わない、やらせることもやらせない、必要なことも言わないというような指導者には絶対になりたいくない」

 この考えは、選手たちにも浸透している。新チームでは、エースストライカーとして期待を集めるFW茂木秀人イファインは「監督からは、常に日本一のフォワードになれというのを言われています。だからプレー面はもちろんですが、日頃の生活面も含めて、もっと自分で考えられるようになれば、目標とするプロの舞台にも近づけるんじゃないかと思います」と語る。

全国の舞台で活躍できなかった無念を、高校最後の年に晴らしたいと意気込むイファイン

全員が責任感を持ってプレーできるか

 県新人大会を制した新チームだが、長谷川監督は「まだまだ時間がかかる」と話す。また、猿山誠コーチも「課題はディフェンス陣。今、ケガ人が多い状況もありますが、失点が少なかった前チームに比べて劣る点はたくさんある」と語る。

 そんなディフェンス陣の要として期待されるのが、地元・山梨の選手である小林士恩だ。ケガの影響で別メニュー調整が続いているが、「自分の長所はヘディング。それを生かせるようにミスを少なく、空中戦でもまけないレベルの高いセンターバックになりたい」と意気込みを語る。

 真の強豪チームへの土台作りは始まったばかりだが、「卒業した3年生に比べて、リーダーシップを取れる選手が少ない。力は持っていると思いますが、自ら引っ張るという気持ちがないと、勝負の場面で絶対に自立できない。だから、全員がキャプテンという意識で、もっと責任感を持ってプレーしてもらわないと」と長谷川監督と気を引き締める。

 つねに先を見据え、10年後でも、“山梨学院は真の強豪”だと言われ続けるようでなければいけないとも話す長谷川監督の挑戦はこれからも続いていく。

前チームよりもいいサッカーができるように頑張りたいとも話す小林

取材・文/松野友克

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