駿台甲府高校 男子ハンドボール部 山梨県の絶対王者が悲願の全国制覇へ闘志を燃やす

常勝チームを支える3つの言葉

 6月11、12、18日の3日間で行われたインターハイ山梨県予選で、他校を寄せつけぬ強さを見せた駿台甲府高校男子ハンドボール部。これで29大会連続29回目のインターハイ出場を決めた。

「毎年6月になると、インターハイ連続出場記録を途切れさせるわけにはいかないというプレッシャーを感じることはあります。でも選手たちが、毎年全国で優勝するんだという強い気持ちをもって戦ってくれるので、記録も継続できているのかなと思います」

 こう話すのは部を率いて7年目を迎える八田政史監督だ。駿台甲府ハンドボール部を常勝チームにつくり上げた前監督の八田政久校長の息子で、自身も同部OBでもある。父親から伝統ある部を引き継いだ八田監督は、「僕自身、駿台甲府のハンドボール部で、“まず、人としてどう成長するかが大切”と教わってきました。指導にあたっては、“明るさ、素直さ、真面目さ”というモットーの重要性を選手に伝えるように心がけています」と語る。

 ハンドボールの技術を磨くためには、一人の高校生として周りに恥ずかしくない生活ができているかを考える。それができれば、自ずとハンドボールに取り組む姿勢や向き合い方も変わり、そのことが高校卒業後にも生かされるというのだ。この指導方針は、選手たちも十分に理解している。練習中でも上級生や下級生関係なく声を出し合い、切磋琢磨する様子が見て取れた。「指導者として関わるようになってから、3つのモットーが表す本当の意味がわかるようになってきましたね」と、八田監督は笑顔を見せる。

選手たちの練習風景を鋭い眼差しで見守る八田監督

自分たちの弱さを認め強いチームへと成長

 今年3月に卒業した世代は、昨年のインターハイで3位という結果を残した。「運動能力の高い選手が揃っており、それを全国の舞台でも発揮してくれた」と八田監督。では、今回インターハイに出場する世代はどうなのか。「個々の能力で見れば、昨年より劣る部分はあります。でも、選手それぞれが、自分の能力と向き合い、今できることをチーム全体で意思統一しながらプレーできているのは、昨年との違いだと思います」(八田監督)。

ひとつ上の先輩よりも能力で追いついていないことは選手も自覚している。キャプテンの金子眞虎(3年)は、「自分たちが先輩たちに比べて強いチームではないことはわかっていました。強くなるためには練習しかなかったので、監督とも話し合いながら、夏休み期間は朝から夜まで練習に明け暮れました」と話す。副キャプテンの清水翔悟(3年)も「とにかく強くなりたいの一心でした。1年生の頃はコロナ禍の影響で、大会が中止になったり、遠征ができなかったりと経験を積むことができなかったので」と教えてくれた。

 この猛練習が功を奏して、今年3月の全国高校選抜ではベスト8入り。そして、5月の県総体、6月のインターハイ予選でも、持ち前のチーム力を発揮する試合運びで優勝。インターハイ連続出場の記録を継続させてみせた。

インターハイ予選では「駿台甲府一強を証明したかった」と語る金子

清水はチームの得点源として全国選抜ベスト8入りに大きく貢献

中学で日本一を経験した1年生がチームの起爆剤に

 たゆまぬ努力を積み重ねて成長した3年生、2年生。そして2022年度に入学した1年生には素質の高い選手が多いという。なかでも、2021年度の全国中学校大会で日本一に輝き、昨年12月に行われたJOCジュニアオリンピックカップでも東京選抜を優勝に導き、最優秀選手にも輝いた古澤宙大への期待は大きい。中学時代も同じ学校でチームメイトだった清水は、「中学時代から能力が高い選手だとわかっていたので、また同じチームでプレーができ、即戦力として頑張ってくれているので頼もしい」と口にする。そんな古澤は、「速攻をベースに攻撃を組み立てるスタイルが中学のチームと同じで、個として成長できると思った」と駿台甲府へ進学した理由を教えてくれた。そして、「フィジカルで負けたくない気持ちは強い。体力強化に務めながら、先輩たちと培ってきた力を、インターハイでは出し切りたい」と意気込みを語った。

 有望な1年生の加入で、選手層にも厚みが出て、チーム力のアップにもつながっている。オフェンス、ディフェンスの両面で課題は残っているというが、「インターハイ本番までレベルを上げていき、チーム一体となって一戦一戦を戦っていきたい」と八田監督は話す。

 キャプテンの金子は、「自分たちの弱さを理解し、この1年、基礎から積み上げてきた。その結果、全国でも上を狙えるという自信もついてきたので、インターハイでは全員で力を合わせてプレーしたい」と強い気持ちを表した。

インターハイのハンドボール競技は7月30日からスタート。駿台甲府の初戦は31日で、湯沢高校(秋田)と氷見高校(富山)の勝者と激突する。悲願の全国制覇へどんなプレーを見せてくれるか、今から楽しみは尽きない。

チームの司令塔的役割も担う古澤への期待は大きい

インターハイ本番を前に、最後の調整を積む駿台甲府の選手たち

取材・文/松野友克

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