東海大学付属甲府高校柔道部 “柔道しかしらない選手になるな”をモットーに県の絶対王者として君臨

圧勝に見えた新人戦にも多くの課題が

 3月21日(土)・22日(日)に行われる「全国高等学校柔道選手権大会」。毎年7月の金鷲杯、8月のインターハイと並ぶ高校柔道3大大会のひとつで、今年はALSOKぐんまアリーナで開催され、高校生柔道家の目標でもある。その大会に団体戦で10年連続、個人戦でも全5階級で出場権を得ているのが東海大学付属甲府高校柔道部だ。

 新チームで初めて挑んだ昨年10月の県新人戦は、団体、個人ともに完全制覇。団体戦では、メンバー5人全員が一度も負けることのない圧勝劇だった。それでもチームを率いる内山亮監督は、「新人戦の試合内容から課題を洗いだし、高校選手権予選に向けて調整をしました」と語る。
 迎えた1月の選手権予選では、各選手たちが課題を克服する内容をみせ、新人戦と同じく団体戦、個人戦ともに完全優勝を成し遂げた。

活気にあふれる柔道場。壁には「斉藤立に勝つ」「打倒 東海大相模」など、毎週、自身の”野望”を書いた紙が多数張られている。目標達成後はそれを破り捨て、新たな目標が掲げられる。

「君たちが誇れる柔道部にする」

 創部は1974年と長い歴史があるが、内山監督が赴任した11年前は部員わずか3人。そのため、30分程度で練習を切り上げることも多かったという。それでも内山監督は部員に対し、「柔道部に在籍していたことが、君たちの誇りになるように指導する」と言葉をかけた。3人の部員も監督の言葉を胸に、練習に没頭するようになり練習時間も増えていった。

 その一方で内山監督は選手のスカウトにも注力。監督2年目を迎えた年には、有望な選手が9人入部し、ここから絶対王者となるチームが徐々に完成していった。「3人がよく頑張ってくれた。自分にとって、あの年がこの柔道部の原点」と、優しい笑顔で振り返る。

 チームを強豪校に押し上げた内山監督だが、選手たちには高校生としての生活をしっかり送ってほしいという考えを持つ。そのため、“赤点を取ったら、部活動への参加を禁止”という決め事を設けている。「赤点を取るということは、高校生の本分をおろそかにしているということ。言い方は悪いが”柔道バカ”になってほしくない」と話す。

内山監督のポリシーは2つ。「日の丸を背負える選手の育成を目指すこと」と、「社会に出て活躍する人材を育てること」

日の丸を背負う日を夢見て

 現在の部員は、卒業を控える3年生を含め27人。練習は、実際の試合を想定したメニューを多く取り入れるほか、ブラジリアン柔術を取り入れ、組み技を柔道に取り入れる試みもしている。また、2ヵ月に1度のペースで、他の部を訪問し競技体験をさせている。「さまざまなスポーツの大変さを知って、人間の幅を広げてほしい。柔道をする際に発想の転換にもなると思う」(内山監督)

 多くの経験をして成長を続ける選手たちの中で、変化が目に見えてわかるのは、主将の近森聖悟(2年)だという。以前は、練習に遅刻することもあったそうだが、今では一番に道場に入り、練習中も率先して声を出している。心境の変化の裏にあったのは、主将に任命されたときに、”キャプテン”という言葉の意味を辞書で調べたことだった。「『まとめる人』とあった。その時から”チームの為に”を、心に刻んで率先して動くようにしています」と、心を入れ替えたと話す。

 内山監督が一貫して伝え続けている「最強ではない。最高になれ」。強い柔道家になるには、高い人間性が必要という意味だ。「大学へ進学したり、社会に出たら壁にぶつかる事もあるはず。自身で道を切り開く力を身につけて欲しい」と、おおらかな、しかし強い信念に基づいた口調で紡ぐ言葉は、部員一人ひとりに着実に届いている。

「3月の柔道選手権でベスト4。そして8月のインターハイでは優勝したい」と意気込む近森


▼クレジット
取材/佐藤わかな

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