クリーンファイターズ山梨 クラブチームとしての存在意義を示し 、山梨のラグビー界を盛り上げたい

昨季はリーグ戦全敗とチーム状況はどん底に!

 9月20日に開幕したラグビーワールドカップ。初のアジア開催で日本代表の奮闘もあり、日本全体がラグビーの魅力に酔いしれている。ラグビー熱が高まっている今だからこそ、山梨のラグビー界をさらに盛り上げていきたいと、奮闘を続けるクラブチームがある。

クリーンファイターズ山梨。

 1991年12月に東京洗染機械製作所製造部が山梨に移転してきたことを機にチームの発足が決定。創部当初は企業チームとして活動しており、関東社会人リーグ1部で優勝を果たすなど実績も残してきた。現在は関東ラグビーフットボール協会に属するジャパントップイーストディビジョン1で戦いを繰り広げ、トップチャレンジリーグ、そしてトップリーグへの昇格を目指している。

 チームの歴史は30年近くになるが、ここまで順調に来たわけではない。チーム結成が決まってもなかなか部員は集まれず、試合に出られるようになったのは結成決定から3年後。その後、企業チームからクラブチームへの体制移行が行われるなど、資金面を含め運営面での苦労は絶えなかった。そんな中で、2018年シーズンはジャパントップイーストディビジョン1で全敗。ディビジョン2降格は免れたが、チーム再建には待ったなしの状況まで追い詰められていた。

クリーンファイターズ山梨の練習は、東京洗染機械製作所山梨工場に隣接するグランドで行われている

今のチームに必要なものは未来へつなぐ土台

 そんなチームを再建すべく、今年から指揮官に就任したのが加藤尋久監督だ。現役時代は、熊谷高校、明治大学、神戸製鋼とラグビーの強豪でプレーし、日本代表としても活躍した実績を持つ。現役引退後は、指導者として、青山学院大学をはじめ多くの強豪校で監督を務めた。

 加藤監督は現状のチーム状況をどのように見ているのか。
「今は、もう一度チームの土台を作り上げる時期だと思っています。これまでの悪しき習慣をすべて取り払って、5年後、10年後にも引き継げる土台を作り上げる必要がある。だから、勝つことだけを考えた小手先の強化はいらないんです」

 9月7日に開幕した今季のトップイーストディビジョン1でも、クリーンファイターズ山梨は、9月29日時点で3戦3敗と結果は出ていない。しかし加藤監督は、今は勝ち負けよりも、山梨県唯一のクラブチームとして強くなるために不可欠な足場作りを大事にしているという。

練習中は自らも積極的に動いて指導する加藤監督。

自分で物事を考え判断できる選手が揃うチームにしたい

 もともと山梨は、ラグビーが盛んなエリアでもある。高校では13年連続48度の全国大会に出場を果たす日川高校があり、山梨学院大学からは日本代表選手も複数輩出している。だからこそ、山梨唯一の社会人クラブチームとして、県ラグビー界を引っ張っていきたいという気持ちも強いと加藤監督は話す。

「ここ数年、山梨のラグビー界が停滞しているのは事実です。だからこそ、私たちが先頭に立ってラグビーの魅力を多くの人たちに伝え、強い山梨ラグビーを復活させたいと思っています」

チームの土台作りだけでなく、山梨県のラグビー普及にも尽力している加藤監督。20年以上の指導者経験の中で、必ず選手に伝えていることがある。それは「指示待ち人間にならないこと」だ。

「ラグビーは瞬時の判断が要求されるスポーツ。だから、選手は自立して物事を考えたり判断したりできないといけません。それができないと、いくら練習してもうまくならない。ちゃんと自立できていれば、周りとのコミュニケーションもしっかりとれるはず。だから、仕事で練習にこられなかった場合、次練習参加したときに、前回はどんな練習をしたかを誰かに聞くはずなんです。今のチームにはそういう選手が少ないので、その点をしっかりと指導していかないといけません」

 自ら率先して動く。これは、ラグビーに限らず一般社会においても重要なポイントになる。ラガーマンとしてはもちろん、ひとりの社会人としても成長してほしいという思いが、加藤監督の指導方針には込められている。

ラグビーでは、わずかな気のゆるみも大けがにつながりかねないため、練習中であっても高い集中力が求められる

取材・文/松野友克

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