深澤駿 県高校生で唯一のエアライフル競技者が JOCジュニアオリンピックカップで日本一を狙う

先に競技を行っていた従姉妹の話に興味を持つ

笛吹市にある八代射撃場。かつて日本代表の強化合宿が行われていた場所だ。ここでオリンピック出場を夢見て一人のアスリートが今日も練習に励む。今年5月に行われた県高校総体で大会新記録を更新。今年8月には東アジアユースエアガンの国際大会にも出場を果たした深澤駿(甲府城西高・3年)だ。

深澤がライフル射撃競技と出会ったのは10歳のとき、従姉妹が甲府城西高校でライフル射撃をやっていたことが影響した。「いろんな話を聞かせてもらって、かっこいいと思うようになり、自分も同じ高校に進学して競技をやろうと決めました」

エアライフルは、ライフル射撃の種目の一つで、重さ約5kgの空気銃を立った状態で構えて、10m離れた的に弾をあて得点の高さを競い合う。標的は500円硬貨ほどの大きさで、中心は直径0.5mmと小さく、心技体すべてが一致しなければ中心に当てることはできないという。そんな競技を深澤は、「ライフル射撃は神経を使う競技で難しい点も多いですが、努力が点数に反映されるのが魅力です。目に見えて点数が上がるとやりがいを感じます」と語る。

エアライフルの基本姿勢は立射。この構えに狂いが生じると、大きな点数の差にも広がってしまうという。

探求心旺盛な性格がもたらす快進撃

ライフル射撃には、エアライフルの他にビームライフルもある。エアライフルは銃砲所持の許可が必要なため、高校生は光線銃のビームライフルから始めるのが一般的だという。深澤も、競技を始めたときはビームライフルで腕を磨いていた。一方、オリンピック競技にビームライフル種目がないため、県ライフル協会の土屋清博理事長から「大学、社会人でも競技を続けるなら、エアに転向してみてはどうか」と助言を受けたこともあり、早めの転向を決意した。

エアライフル転向後、初の公式戦は去年10月の福井しあわせ元気国体。「ビームライフルで習得した構えなどの基礎はエアでも活かせることが多いので、銃が変わっても違和感は全くありませんでした」と深澤。転向から試合まで練習時間はあまりなかったが、ビームライフルで1年4ヵ月間磨いた技術も存分に活かして見事に5位入賞を果たした。

そんな深澤には、技術指導を行うコーチはいない。だが、「基礎はビームライフルで作れたと思うので、あとは応用。コーチがいなくてもインターネットで世界のトップ選手の動画を見て、動きや大会での心の整え方を研究しています」と胸を張る。この探究心と前向きな性格こそが、短期間で結果を出し続ける源と言えるだろう。

「普段の練習は一人でも、大会で仲良くなった仲間が全国にいます」遠く離れたライバルの存在が、練習の気力にも繋がる。

高めた精神力を維持し続ける力が、勝敗を決めるカギ

この競技で非常に重要なのはメンタルの強さだと深澤。「メンタルトレーニングを始めるまでは、大会で足の震えが止まりませんでした。去年の福井国体関東ブロック大会でも足がすくんでしまって……」自身の課題を認識した。そして国体後から、公認心理師の元で呼吸法や、自律神経の仕組みなどを教わるようになった。成果は面白いように表れ、思い描く射撃ができるようになった。メンタルトレーニングを行って気付かされたことは、「己に勝つ大切さ。他の選手に勝つのではなく、自分の心に勝つことが全て」と話す。

今後の目標は全国大会での優勝。7月の全国高等学校ライフル射撃競技選手権大会では4位だった。優勝を狙っていたため「悔しかった。次は必ず日本一になる」と決意を新たにした。

9月6日からは、埼玉県長瀞射撃場で開かれるJOCジュニアオリンピックカップに出場する。国際大会も経験し一回り以上大きく成長した深澤が、どんな成績を残すか楽しみは尽きない。

呼吸、心臓音、指の感覚など自身の全てが一致しない状況で引き金を引くと、決していい結果はでないという。

撮影◎笠井豪司
文◎佐藤わかな(サイバーエージェント)

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