山梨学院高校女子ソフトボール部 復活した強豪が今度は初の日本一へ邁進する!

強豪復活を託された名将の手腕

 過去にインターハイ、全国選抜ともに17回出場。2012年度の全国選抜では準優勝にも輝くなど、輝かしい経歴を持つ山梨学院高校女子ソフトボール部。名実ともに山梨県の高校ソフトボールを長年けん引してきた強豪校だが、一時は部員の減少などに伴い、廃部の危機に直面したという。どん底まで落ちたチームの機運を浮上させたのが、現在チームを指揮する渡辺努監督だ。指導歴約35年以上の大ベテランで、埼玉県の星野高校で監督を務めていた時代は、幾度もチームを全国制覇に導いている。

 名将とも呼べる渡辺監督に、チーム再建を果たせた要因を聞くと、「これまでの経験を生かして、環境に応じた指導を心がけたことが一番」と話す。そして「就任したときの部員はわずかに5人。そのようなチーム状況で、過去と同じ指導をしてもチームは絶対に強くならない。選手の能力はもちろんですが、モチベーションも大きく違う。まして、時代とともに選手たちの考え方も大きくかわってきた。だからこそ、部のモットーでもあるように“臨機応変”を忘れずに指導しないといけないんです」と教えてくれた。

練習中も的確なアドバイスを送っていた渡辺監督

先輩たちがなし得なかった日本一への挑戦

 現在の部員は19人(2年生9人、1年生8人、マネージャー2人)。今では、「山梨学院で日本一になりたい」という強い意志を持った選手も増えているという。強豪復活へ着実に前進しているが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全国選抜、インターハイと目標となる大会が中止に。3月に卒業した3年生たちは、全国制覇という夢にチャレンジすらできなかった。その悔しさを知る2年生のキャプテン細矢杏は「前キャプテンは、自分にはないものをたくさんもっていて、本当にチームを引っ張ってくれていた。その人からキャプテンを引き継いだわけですから、自分も先輩に近づけるように頑張りたいですし、先輩たちが叶えられなかった日本一と成し遂げたいと思います」と力強く語ってくれた。

 現チームには全国大会を経験しているメンバーも残っている。中でも、エースの田中愛花は1年生のとき、インターハイで先発を経験した。「まだまだ成長していかなければいけない点は多いですが、徐々にメンタル面は強くなっているなと思います」と前を向く。

 現在、ケガでリハビリ中という田中は、「これまで痛みが出ても隠して投げることがあった。しかし、渡辺先生から『今頑張っても意味がない。大事な大会で投げられないほうが、チームに一番迷惑になるし、自分も後悔する』と言われ、少し考え方も変わりました」と教えてくれた。このエピソードからも、渡辺監督が選手とのコミュニケーションを大切にし、臨機応変な対応をしていることが十分に伝わってくる。

みんなで声を出し合い活気に満ちた練習を続けている

今夏のインターハイへ向けた足がかりに

 昨年10月に行われた全国選抜大会の予選を兼ねた県新人戦でも、他校を圧倒する強さを見せつけ優勝3年連続で18回目の出場を決めた。全国選抜では1回戦で、佐賀女子短期大学付属佐賀女子高等学校と激突。過去にインターハイ優勝の実績を持つ強豪だけに、大会までの練習は重要なものになる。しかし、近隣の1都3県の緊急事態宣言に伴い、予定していた練習試合が中止、延期が相次いでいる。

「現状で対外試合ができないのは、うちだけではないので仕方がないこと。全国選抜はトーナメント的に厳しいものがあるので経験は積ませたいですが。それでも、最大の目標は夏のインターハイ。全国選抜はその足がかりになればと思っています」と渡辺監督。

 キャプテンの細谷は、「まだ、大事な場面で声がでなかったりと課題が多いので、そこをクリアして全国に挑めるようにしたい」と話す。また、地元・山梨の選手で、渡辺監督が「期待の1年生」と語る遠藤愛実は、「全国制覇を目標に自分がやるべきことをしっかりやって、チームに貢献できるようにしたい」と意気込みを語ってくれた。

 経験豊富な名将のもとで、チームが悲願の日本一に輝く瞬間を見てみたい。

ショートで軽快な動きを見せる遠藤(右)

取材・文/松野友克

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