竜電剛至 攻める相撲で三役以上を目指す

甲府場所は、2年連続での開催

 10月12日に行われた大相撲の地方巡業「甲府場所」。当日は、台風19号の接近による悪天候となったが、会場のアイメッセには3900人が集まり、鶴竜、白鵬の両横綱に、9月場所で優勝した御嶽海ら人気力士たちの迫力ある取組に酔いしれた。

 その中でもひときわ大きな拍手と声援が送られたのが、甲府市出身の竜電(高田川部屋・28)だ。三役経験後初の山梨凱旋となったこともあり、握手会には長蛇の列ができ、館内を移動する竜電の周りを、子どもからお年寄りまで幅広いファンが取り囲んだ。31本の懸賞金がかけられた妙義龍との一番では、迫力ある左上手投げで勝利。この瞬間、われんばかりの歓声が会場に響き渡った。

 巡業後、甲斐市から訪れたという40代の男性に話を聞くと、「この台風で、お客さんは少ないのではと思ったが、会場に入る車の行列に驚いた。竜電が思った以上に大きかった。来てよかった」と楽しそうに語ってくれた。

豪快な左上手投げで、妙義龍を下した竜電

3場所ぶりに、番付を大きく下げた秋場所

 今年の7月場所番付発表で、竜電は、県出身力士として47年ぶりに新三役へ昇進。地元ではこの偉業を号外で伝えるほど、大きな盛り上がりをみせた。そして迎えた7月の名古屋場所。序盤、竜電は2大関を破る快進撃を見せたが、8日目以降は5連敗を喫するなど調子を落とし、終わってみれば4勝11敗。大きく負け越しとなり、一場所で三役から降格することになった。続く9月の秋場所でも7勝8敗と負け越し、目標だった三役復帰はならなかった。

「今年はよい場所もあったが、負け越した場所が多かった。守る相撲ではなく、攻める相撲をとって、来年は三役以上を目指します」と竜電。巻き返しをはかる勢いを見せつつも、穏やかな表情は崩さなかった。

観客の見守る中、稽古は朝9時過ぎから始まった。胸を貸す大関栃ノ心に10回ほどぶつかり稽古をした竜電。15m程離れたところにいても荒い息遣いが聞こえてくるほど気迫に満ちていた。

迫力ある体格からこぼれる、優しい笑み

 巡業を終えた竜電に話を聞くと、「自分の特徴は、”元気のある相撲”。子供たちが『相撲をしたい』と思ってくれたらうれしい。山梨県の皆さんに、これからも応援してもらえるように頑張ります」と頼もしく答えた。多くのファンに囲まれ館内を移動できなくなる場面もあったが「本当にたくさんの人に来ていただいた。声もかけていただき、うれしい限り」と感謝の言葉を口にした。

 2012年の9月場所で幕下優勝を果たし、翌11月場所で新十両となるも場所中に骨折。この影響で番付が序ノ口まで下がってしまった。その後、見事な復活劇で三役昇進を果たした竜電。関取経験者が序ノ口まで番付を下げたのちに三役になったのは史上初めてのことだ。このような復活劇を演じられたのも、「悪い時も腐らず稽古に励む一生懸命さがある。約束を守る誠実な人間性も評価できる」と、歓進元の飯室元邦会長が話すように、竜電の人柄が影響しているに違いない。

 最後に「来年も甲府巡業があるのであれば、三役以上になって帰ってきたい」と、笑顔で語った竜電。近2場所は悔しい成績となったが、自身29回目の誕生日である11月10日に初日を迎える九州場所では、きっと巻き返して好成績を残してくれるはずだ。

日頃の稽古では「上体が上がらないこと。頭を上げないことを意識している」という。

撮影◎笠井豪司
文◎佐藤わかな(サイバーエージェント)

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