課題を明確にし、実践する力を身につける
今年5月のいきいき茨城ゆめカップ。八木野航平(常永小・6年)は、自由形の2種目で県学童記録を更新してみせた。ここから勢いに乗った八木野は、6月の山梨県夏季水泳競技大会、7月の山梨県選手権水泳競技大会でも記録更新を達成。今年だけで7種目で県トップの記録を叩き出した。
そんな彼が水泳を始めたのは4歳の頃。姉が水泳スクールへ通うことがきっかけで、一緒に入会したという。当初は姉が一緒にいないとすぐに泣いてしまうなど、水泳を続けられるか心配させることも多かった。しかし、スクールの友達と会えることが楽しみとなり、泳げる種目も増えるなど、どんどん水泳への興味が湧き、週1日だった練習も7歳のときには週4日に増えたという。さらに、母親も泳いだ距離をノートに記録するなどサポート。本人も泳げる距離が伸びていく達成感を味わえるようになる。
そんな練習を積み重ねて、小学3年生のときに初めて全国大会出場。しかし結果は、50m自由形で85人中76位、50m平泳ぎで75人中73位。目標タイムにも届かず、悔しさだけが残ってしまう。本人としては全国の壁に跳ね返されたのだが、この経験が八木野をさらに水泳に没頭させるポイントとなった。ここから徐々に結果が出なくてもすぐに諦めてしまうのではなく、いい経験だと前向きに捉えられるような考えになっていく。この思考の転換が、翌年同じ大会に出場したとき、50m自由形での5位入賞につながる。
課題は多数も記録を出せる素質の高さを秘める
八木野の泳ぎの特徴は、スタートダッシュにある。飛び込みから着水すると、小学生離れした躍動感あるドルフィンキックで勢いをつけ、そこから軸をぶらさない泳ぎへとつなげていく。
2年前から指導する松野圭介コーチは、泳ぎが出来上がっていない中でも記録を出す八木野の素質を認めつつ、「フォームの面でも、多くの改善点がある」と話す。「今の課題は柔軟性を身につけること。水泳では肩周りと足首が硬いと、水の抵抗が大きくなりやすいので。また持久力も付けていってほしい」八木野も自身の課題を理解しており、自宅でのストレッチを毎日欠かさないという。
そんな八木野が尊敬するのは、自身と同じフィッツスイミングスクール竜王校出身の江原騎士だ。2016年のリオデジャネイロオリンピック男子800mフリーリレーで銅メダルを獲得し、東京オリンピックにも出場が期待される江原の魅力を八木野は次のように話す。「江原選手は、身長172cmで水泳選手としては決して大きくないと聞きました。身長が低い選手でも体格のいい海外の選手たちと戦っている姿を見ると勇気をもらえます」
目指すはジュニアスイマーの登竜門「エリート合宿」
現在は、8月21日~26日まで東京辰巳国際水泳場で行われるJOCジュニアオリンピックカップ夏季水泳競技大会へ向け調整中だ。八木野は「この大会では、50m自由形を26秒前半、100m自由形で56秒台、200m自由形で2分3秒を出したい」と目標を語った。
出場する種目のいずれかで2位に入ることができれば、9月に秋季エリート小学生研修合宿への参加が認められる。将来、オリンピック出場も見据える八木野にとって、全国のトップジュニアが集結する合宿への参加は、貴重な経験となるだけに、是が非でもその切符を手に入れたいところだ。
指導する松野コーチもオリンピックを狙えると太鼓判を押す人材だけに、今後どのような成長を見せてくれるか、楽しみは尽きない。
撮影◎笠井豪司
文◎佐藤わかな(サイバーエージェント)