都留興譲館高校相撲部 前身校から受け継がれる伝統を守り、再び全国の頂へ

部の伝統は“基礎基本の徹底”

 山梨県内の高校で唯一相撲部がある都留興譲館高校。2014年に谷村工業高校と桂高校の再編・統合に伴い設立された学校だ。相撲部は、1987年の沖縄国体で優勝を果たすなど、全国でも好成績を残してきた谷村工から歴史は受け継がれている。部員たちが日々の稽古を励む相撲場も、谷村工時代から使用されているもので、壁には先輩たちが残した表情や写真などで埋め尽くされている。部を指導する重森誠市監督も、谷村工OBで、この場所で汗を流した経験を持つ。

「大学を卒業して、教員になったと同時に谷工に赴任させていただき、相撲部を見ることになったんです。最初は、母校で教えるっていうことに対して不思議な感じはありましたが、思い入れは強くなりますよね」と重森監督。部員たちへの指導方針は“基礎基本の徹底”だ。「基礎基本を怠らないことは、谷工の伝統でもありましたから。その歴史と私が高校、大学で教わったことを忠実に伝えることが役目だと思っています」。

 人と人が激しくぶつかる競技の相撲において、基礎基本が身についていなければ大ケガにつながる。まして、高校から相撲を始める部員も多いため、絶対に手を抜くことはできない。

部員たちの稽古を厳しい眼差しで見守る重森監督。「基礎基本の徹底にこの部の全てが集約されている」と力を込める

互いに切磋琢磨できる仲間が揃う

 2019年度の部員は11人で、現在は、3月に卒業する3年生3人を除く8人が3月に高知で開催される全国高等学校相撲選抜大会へ向けて稽古している。取材当日は、全員揃っての稽古ではなかったが、柔軟、四股、すり足など、相撲の基本を黙々とこなす部員たちの姿があった。相手を土俵際まで押し出すぶつかり稽古では、体と体が当たるごとに“バチン”という大きな音が相撲場に響き渡る。

 部長を務める堀内大晴(2年)は、現在の部員について、「相撲になるとみんな目の色が変わるので、互いに切磋琢磨できる。たくさん刺激ももらえますし、自分の励みにもなります」と現在の部の様子を教えてくれた。

 谷村工相撲部出身の父の影響で中学から相撲を始めた堀内。高校まで相撲を続け、自分のことは自分でやらなければいけないという責任感が出たことが、一番の成長と語る。さらに今回部長を任されたことで、また一つ成長を遂げようとしている。
「先生から、『自分のことができないと周りはついてこない。後輩にはしっかり背中をみせられるように』と言われているので、実践できるように頑張りたい」と口にする。

ぶつかり稽古で、胸を貸す堀内。試合で勝ったときに、稽古の努力が報われたと思えると話す

昨年の雪辱を晴らしベスト8以上へ

 2019年3月の全国選抜の団体戦はベスト32。「去年、悔しい思いをしているので、今年は絶対に上の成績を残したい」と堀内は前を向く。重森監督も「目標はベスト8以上。その結果を残すためには、本番までに課題の筋力アップができるかポイント」と口にする。素質ある部員が揃っていることもあり、全国でも上位に食い込む可能性は高い。それでも、インターハイや国体の5人制ではなく3人制の勝ち抜き戦となるため、一戦も気を抜くことはできない。
 
 昨年は、山梨出身の関取・竜電が県出身力士として47年ぶりの三役に昇進。台風が接近する悪天候の中で行われた10月の甲府巡業にも多くの人が集まった。各地域では、わんぱく相撲が行われるなど、山梨の相撲人気は高い。

 今度は、都留興譲館高校相撲部の部員たちが、3月の全国大会で旋風を巻き起こし、県内に明るいニュースを届けてほしい。

2つの土俵が設けられている都留興譲館高の相撲場。谷村工業高時代から受け継がれ、さまざまな歴史が詰まった場所でもある

▼クレジット
撮影・文/松野友克

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