ABCバドミントン大会山梨県代表 全国大会中止も、これまでの努力は次なる目標への糧になる

 年に1回、各地の予選を勝ち抜いた小学生によって競われる、バドミントンの全国大会「ダイハツ全国小学生ABCバドミントン大会」。トッププレイヤーへの登竜門として知られる大会で、今月14、15日に熊本県八代市の八代トヨオカ地建アリーナ(八代市総合体育館)で開催が予定されていたが、昨年に続き、新型コロナウイルスの感染拡大により今年も中止が決まった。開催約2週間前の発表となり選手たちは様々な思いを抱えているはずだ。そこで今回は、選手たちの努力する姿を多くの人に伝えるため、山梨県予選会を勝ち抜き、全国行きの切符をつかんだ7選手らが参加した練習会の様子を山梨ダイハツの窪嶋利奈さんにレポートしてもらった。

小学生だからこそ基礎トレーニングが重要

 7月25日、勝沼体育館で行われた山梨県小学生強化練習会にお邪魔しました。当日は、35度近くまで気温が上がった猛暑日。子どもたちの熱中症は大丈夫かなと少し心配でしたが、体育館内は空調により適度な温度に保たれ、コロナ対策の換気も含めて、練習環境は万全でした。約20名の選手たちが集合した際、山梨ダイハツが差し入れとして用意させていただいたスポーツドリンクを1人1人にお渡しし、練習会がスタートしました。

 みんなで広がって準備運動をした後は、6面のコートが設置された周りをランニングです。2、3周で終わるかと思いきや、かなりの時間をしっかりと走り込んでおり、低学年の中からは少しずつ後れを取る選手も出るほどでした。その後は、腕立て伏せのような体勢からジャンプを数回繰り返して、ダッシュするなど、サーキットトレーニングと呼ばれるトレーニングも行います。コーチの宮健次さんによれば、「バドミントンには瞬発力やスタミナが不可欠。シャトルを打つだけの練習ではなかなか養えない基礎体力を、こうしたトレーニングによって鍛える必要がある」とのことです。
一連のトレーニングを1時間ほどこなしてから、選手は学年ごとに各コートに分かれ、ようやくシャトルを打つ〝バドミントンらしい〟練習に移っていきました。どの選手も真剣な表情でシャトルを追いかけ、ときおり放たれるスマッシュは、さながらトップ選手のような鋭さがありました。
 今回見学させていただき、選手のみなさんの頑張りがとてもよく伝わってきました。基礎練習でも声を出しながら頑張っている姿を見ると、毎日の積み重ねが強さにつながると感じます。

休憩時間には、練習会参加者にスポーツドリンクの贈呈が行われた

全国で勝てる選手を目指して

 今回の練習会には、「ダイハツ全国小学生ABCバドミントン大会」山梨県予選会の各グループ優勝者が勢ぞろいしました。男子Aグループ(5、6年生の部)を制した篠崎理央選手(甲府ジュニアバドミントンクラブ)は、「練習でできなかったことができるようになったり、試合でうまく点を取れたときにうれしいと思えること」がバドミントンの魅力と言います。今後の目標を「関東大会で活躍したり、いつかは全国大会で1位になりたいです」と力強く語ってくれました。
 県予選で篠崎選手に決勝で敗れたものの、準優勝に輝いた下田侑選手(中道ジュニア)は「わざと甘いボール上げて、相手のスマッシュを逆に良いところにレシーブして、相手の体勢を崩したり、スマッシュとか強い球で相手を押してから、短いボールで決める」という駆け引きを使った頭脳的なプレーが得意です。2年前に出場した全国ABCでは、Bグループ(3、4年生の部)のブロック予選で2敗に終わり、「悔しかった。また全国大会に出られたら、できればもっと上の順位を狙っていきたい」と気合い十分です。

県大会を制した篠崎は、練習中、軽快なフットワークを見せてくれた

日本代表選手の活躍に刺激を受ける

 女子Aグループ代表となった田上夕莉選手(鰍沢バドミントンスポーツ少年団)は、この日、準備体操の中心で号令をかけたり、ランニングでも先頭で走ったりと、練習会を盛り上げる役を担いながらも、いつも笑顔で楽しそうにプレーしているのが印象的でした。バドミントンについては、「練習はきついけれど、試合で勝ったときはうれしいし、今まで練習してきたことができているような気がして楽しいです。負けたときは悔しいから、もっとうまくなるように練習を頑張ろうという気持ちになる」と話していました。
 選手たちは、ちょうど開催中の東京オリンピックにも注目しているそうです。篠崎選手と下田選手は金メダル有力候補の桃田賢斗選手(NTT東日本)に、田上は「外国選手より体が小さいのに、カットやスマッシュでギリギリのコースを突くし、低い球にすぐ反応して拾うところがすごい」という奥原希望選手(太陽ホールディングス)に期待していました。

 その他にも、「週に6回練習している」という男子Bグループ代表の武田琉依選手(勝沼ジュニアバドミントンスポーツ少年団)と、「ヘアピンで落として、甘い球をスマッシュするプレーが得意」と話す女子Bグループ代表の望月絆愛選手(鰍沢バドミントンスポーツ少年団)は、2年前の全国ABC出場者です。「シャトルで強い球を打てるところが面白い」と話す男子Cグループ(1、2年生の部)代表の依田樹選手(鰍沢バドミントンスポーツ少年団)と、「お兄ちゃんがバドミントンをやっているのを見て、楽しそうだったから始めた」と話す女子Cグループの佐野陽依選手(鰍沢バドミントンスポーツ少年団)は、全国ABCの県予選初優勝でした。
 4選手もそれぞれ、「ショートサーブから相手のバック側にロブを打って、甘く返ってきたボールをスマッシュで決めたい」(武田琉依選手)、「最後まで諦めないで、良いプレーを出せるように頑張りたい」(望月絆愛選手)「試合で勝ちたい」(依田樹選手)、「試合中の空振りはなくしたい」(佐野選手)と抱負を語ってくれました。

 ABC全国大会の中止は残念ですが、みなさんには、これからもそれぞれの目標に向かって突き進んでほしいと思います。まだ暑い日が続きますので体調には気をつけてください。みなさんが今後も全国のライバルたちと実力を高め合い、いつか世界を舞台に活躍する姿を見られることを期待しています。頑張ってください!




構成/小野哲史

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