日本航空高校 女子サッカー部 養ってきたチーム力を武器に悲願の日本一へ挑む

自主性から生まれる行動がチームに浸透

 春の関東大会で優勝を果たし、夏のインターハイでは3位となった日本航空高校女子サッカー部。全国大会3位という素晴らしい成績を残したが、選手たちは満足していない。なぜなら、最大の目標である全国制覇を達成できなかったからだ。

「インターハイ直後に、『全国で3位もすごいぞ』といったのですが、選手たちが涙を流して悔しがっていた。その姿を見て、選手たちは真剣に全国制覇を目指して取り組んできたんだと改めて実感させられた。それと同時に僕が理想としてきたチーム像になっているなとも思いました。だからこそ、今度の選手権は楽しみでなんです」

 こう語るのは、チームを指揮する堀祥太朗監督。母校・日本航空高校に2013年に赴任し、男子サッカー部のヘッドコーチを経て、2017年から女子の監督に就任した人物だ。

「今までも、日本一を目指して頑張ってきましたが、今の世代は、目標を達成するために自分としっかり向き合い、何が必要かを仲間同士で考えて行動できるようになっている。僕の想像を超えた成長をしています」とも教えてくれた。

 取材当日は、翌日に関東リーグの試合を控えているため、セットプレー中心の練習。ここでも、1つのプレーが終わるごとに選手たちが意見を交わし合う姿が多く見られた。「うちは特別な選手はいない。一人ひとりがチームのために、仲間のために走って戦う姿勢を見せるのが、うちのチームの良さ。だからこそ、みんなで話し合い、自主性を高めることが大事になるんです」と堀監督。

選手同士が密にコミュニケーションをとり、チームワークを深めていった

苦難を乗り越えた地元選手の活躍に期待!

 日本航空女子サッカー部には、現在80人の部員がいる。県外出身者も多いが、地元・山梨で生まれ育った選手の活躍も目立つ。その一人が、キャプテンの沼中彩里(3年/MF)だ。兄の影響でサッカーを始めた沼中は、中学卒業後は公立高校へ進み、部活でサッカーをやらないと考えた時期もあった。しかし、高校でも大好きなサッカーを続けてたいという思いを捨てきれず、高いレベルで練習ができる日本航空への進学を決めたという。

 1年生から試合に出ることも多かったが、苦労もあった。堀監督は「つらいこともあったと思いますが、3年間頑張っていろんな壁を乗り越えてくれた。80人のチームをまとめるのは大変だったでしょうが、本当によくやってくれている」と評価する。沼中は「人前で話すのが苦手だった自分が少し変われたのは、キャプテンを任されたから。みんなの意見をしっかりと聞いて理解して行動できたのもよかったと思う」と、話してくれた。

 また、新チーム移行後に、フォワードからディフェンダーに転向した一瀬葵夢(3年)、ケガで関東選手権の欠場を余儀なくされたの五味小暖(2年/MF)も、山梨出身の選手だ。一瀬の兄は山梨学院高校3年のとき、全国高校サッカー選手権で日本一を成し遂げた。「兄と同じ学年になり、私も絶対に日本一になりたいという気持ちはより強くなった。だからこそ、選手権では結果を残したい」と一瀬は話す。

 一方の五味は、ケガで治療中のときも練習に帯同。リハビリ中もトレーニングメニューについて自分の意見をメモにまとめるなど、復帰後の活躍を見据えて努力を続けてきた。「選手権で活躍するために治療に励んできた。試合では全力を出し切って、チームの勝利に貢献したい」と意気込みを語ってくれた。

「地元の高校で日本一になりたい」と声を揃える五味、沼中、一瀬(左から)

日本一に輝き山梨のサッカー熱をより高める

 
 2年連続13回目の出場となる全日本高等学校女子サッカー選手権大会。初戦12月30日(金)は、聖カピタニオ女子高校(愛知)と激突する。そこを突破すると、順当であれば過去に5度選手権制覇を果たしている常盤木学園高校(宮城)、インターハイ準決勝、秋の関東選手権決勝で敗れた十文字高校(東京)と、強豪との対戦が待っている。

「今年、十文字高校とは公式戦で5度対戦しています。組み合わせが出たとき、またかとも思いましたが、ここを突破しなければ日本一にはなれないと言われている感じもしました。もちろん、十文字高校と対戦するためには、2つ勝たなければいけませんので、選手たちには、初戦から気を引き締めて、絶対に自分たちが勝つんだという強い気持ち挑んでもらいたい」と堀監督。高校最後の大会を前に沼中は、「これまで支えてもらった人たちへの感謝の気持ちをもって、高校3年間でやってきたことをすべて出しきり、必ず日本一を取りたい」と強く語ってくれた。

 2022年10月にはヴァンフォーレ甲府が天皇杯優勝を果たし、11月にはFCふじざくら山梨がなでしこリーグ2部昇格を果たした。「山梨のサッカー熱も盛り上がっていますので、僕たちもこの流れに乗りたい。今の3年生はコロナが直撃した世代。だから最後の選手権で最高の思い出をつくってもらい、選手たちを“よくやった”と褒めてあげたい」と堀監督。

 苦労を乗り越えながら成長した選手たちが、最高の笑顔で大会を終えることを心から願いたい。

「子どもたちの頑張る姿をたくさんの人に届けたい」という堀監督

取材・文/松野友克

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