帝京第三高校女子バレーボール部 14年ぶりとなる春高の舞台で“自分たちらしさ”を忘れずにプレーする

諦めない精神力が逆転勝利につながった

 「大会が開催されるか不安な時期もありましたが、大会が無事にでき、そこで優勝できたことは率直にうれしい」
 帝京第三高校の女子バレーボール部を率いる依田哲也監督は、14年ぶりとなる全日本バレーボール高等学校選手権大会(通称・春高バレー)への出場を決めたことに安堵の表情を浮かべた。

 10月17、18、25日の3日間で行われた山梨県予選。初戦から危なげないゲーム運びで勝ち進んでいった帝京第三は5年ぶりの決勝進出を果たす。迎えた決勝の相手はスタメンの平均身長で約7cm高い東海大甲府高校。試合は第1セット、第2セットを東海大甲府に連取されてしまう。それでも、「決勝は、フルセットの戦いになる覚悟はできていたので、1、2セットを先取されましたが、負ける気はしなかった」とキャプテンでセッターの岩間響(3年)が振り返ったように、ここから帝京第三の巻き返しが始まる。第3、第4セットを奪い返し、第5セットは一時リードを許す場面もあったが、粘りをみせて15対12で終了。セットカウント3-2で勝利し、全国への切符をつかみ取った。

山梨県予選でもチームを鼓舞した頼れるキャプテン・岩間

例年通りのチーム作りができずに苦労も……

 帝京第三の女子バレーボール部が創部したのは今から20年前。その立ち上げにかかわったのが依田監督だ。バレーボールでは攻撃的なスタイルとされるツーセッターを創部当初から採用しているが、「オーソドックスなチームなので、一般的なツーセッターとは違いますが、独自のものを作り上げている形です」と教えてくれた。現チームももちろんツーセッターで、サイドを生かしたオープン攻撃が主体となっている。そのため、チーム作りには速攻などスピードを生かした相手をはじめ、さまざまな相手との練習試合は欠かせない。しかし、今年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響でいつもと違うチーム作りをっ余儀なくされた。「例年なら週末に行う練習試合や遠征でチーム力を高めることができた。今年はそれができずに本当に苦労しました。部員は28人いるので紅白戦はできるんですが、攻撃パターンが似てしまうので……」と話す。2020年1月の新人戦で優勝し、現チームの可能性の高さを感じていただけに、チーム強化には苦労を強いられた。

 さまざまな苦難を乗り越えて春高の切符を勝ち取ることができた。チームを引っ張る岩間は、「監督に日頃から『全員で必死になって1点を取りにいく』ということを言われているので、その気持ちは忘れないように努力してきました」と話すように、どんな状況においても、選手全員が同じ目標に向かって走り続けたことが大きく影響したに違いない。

春高本番へ向けて、追い込みに入っている帝京第三のメンバーたち

小さいチームでも全国で戦えることを証明したい

 2021年1月5日に開幕する春高バレー。初戦の相手は熊本代表の鎮西高校に決まった。平均身長で約10cmも高く、中学時代に主力メンバーの多くが全国都道府県対抗中学バレーボール大会(JOC杯)で準優勝という経験を持っている。そんな強豪校相手にどんな戦いを見せてくれるか。依田監督は「うちには、JOCを経験した選手もいなければ、170cmを超える選手もいない。でも、全国にはうちのようなチームはたくさんあると思う。だからこそ、今度の春高では頑張って努力を続ければ、全国大会に出場できるし、強いと言われている学校にも互角に渡りあえるんだと、見ている人たちに思ってもらえる戦いをしたい」と意気込む。

 高校最後の大会へむけキャプテンの岩間は、「小さいチームなのでサーブとレセプションをもっと強化して、あとはレシーブで粘ってどれだけ相手に食らいついていけるかが課題」と語りWS(ウイングスパイカー)の小平葵は「これまでやってきたことを試合で出せるように悔いなく笑顔で終わりたい」と話してくれた。

 高さのあるチームの活躍が目立つ近代のバレーボール。そんな中で平均身長が小さくても、全国の晴れ舞台で活躍できるという姿を帝京第三の選手たちが見せてくれれば、バレーボールをやりたい子どもたちも増えるかもしれない。

写真・文/松野友克

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